五話くらいまでアップしたときのことです。
『タイトル【雁の聲】がこれからどう響くのかが楽しみ。雁は、確か死者や恋しい人からの便りを運んでくる鳥だったでしょうか。』
と、拍手を送って下さった方がいらして。
ドキリとしました。
渡り鳥である雁は万葉集などで想いを運ぶとかそういう意味合いで使われることが多い鳥です。
終盤を見ていただければ分かりますが、真田家の通紋は結び雁金、州浜、割州浜です。
そして女子である夢主に近しい紋は結び雁金。(これは女紋でもあるようです。)
実際、史実の幸村公も戦以外では六文銭ではなく結び雁金を使っていました。
【雁】は単純に夢主自身でもありますが、その裏で幸村も【雁】。
雁金紋を持つ真田の娘である夢主が渡り鳥【雁】そのままに信州から奥州へ渡り、伊達にあって一人葛藤し一年たつまでなかなか胸の内を披瀝できなかった【聲】、
そして死する瞬間まで夢主を案じていましたが忠義ゆえそれを口に出来ずただ政宗に託した幸村の【聲】
どちらも当初は声【聲】にだして叫ぶことが出来なかったものです。
夢主は最後に愛しい人に自らの胸の内を啼いて叫びました。
幸村は匕首の中に想いを書いた文を仕込んでその啼き声を夢主に知らせました。
真田二人で【雁の聲】なのです。
心残りなのは信之を出せなかったこと。
大好きなんです。信之小松夫婦。
有名なお話ですが信之お兄さんの家には後に宇和島伊達家から養子が入っており、戊辰戦争のときこの養子さんが真田の当主として参戦、同じく宇和島伊達家から仙台伊達家に養子に行った弟に恭順を必死に呼びかけていたそうです。
ちなみにこのとき幸村系の真田家子孫は仙台伊達家の家臣として六文銭を掲げて官軍と戦ったそうです。
歴史は思わぬところで繋がるから面白いですね。
【雁の聲】は私が英雄外伝小十郎ストーリーに触発されて妄想が爆発したのが始まりです。小十郎と幸村の遣り取りを伏線に入れて書いたお話なので二人について補足してみようと思います。
※小十郎※
作中に余り彼が出張らないことを疑問に思われてた方は多かったと思います。理由は最終話で見て頂いたとおりです。伊達家中の中で唯一幸村の本心を知る小十郎は多くを語らず見守るのが仕事でした。
当サイトの筆頭の性格上、小十郎までお小言を言えばかえって二人の溝は深まるかもしれません。大人な小十郎ならばそれを見越して、あえて何も言わず見守るのではないか。二人が本当に駄目なときだけ出て夢主をそっと下がらせようとするのではないか、と考えました。
序盤の二話、三話ですが、残りはお館様という戦の大詰めの場面で命令とはいえ筆頭を残して一旦本陣に引いています。本来なら絶対傍を離れるはずのない大事な場面で彼が夢主を安全な場所へ運ぶという行為。その辺でも小十郎は幸村の文との間で揺れ動いていた訳です。
伏線はいろいろ入れていたつもりですが、皆様の目から見て雁の聲の小十郎は、竜の右目の名に相応しい思慮深く義理堅い小十郎になっていたでしょうか。
※幸村※
大好きなのにあえて死に役でした。好きが高じすぎた結果かもしれません。本当にごめんなさい。
BASARAの幸村を見ていると、ウォヤカタサムァァア!ばかりに目がいきそうですがその実、身持ちはとても潔癖で、立つ鳥跡を濁さずではないですが、女性を散り際に巻き込むようなことはしないだろうな。でも不器用だから絶対口に出せない人なんだろうな、なんて妄想したのが発端でした。
元々、史実でも戦場に散る御方で、娘さんを小十郎の息子さんに預けたお話があるだけにどんどん話が膨らんでいきました。
うまく表現出来ませんが、散る中にも高潔な武将らしい彼を書けたなら嬉しいです。
おまけ
※成実※
小十郎が喋らない分頑張りました。当作品のMVPです。
※栽松院様※
対奥州筆頭用ファイナルウェポン。筆頭、成実に続き三番人気でした。
※鈴木元信※
一部に熱狂的な人気を得ていました。
※佐助※
小十郎と同様、武田で唯一幸村の本心を知る男です。幸村が死んだのに佐助だけ生き残るのは違和感がある方もおられると思いますが、彼の想いが痛い程分かるからこそあえて落ち延びる道を選びそうかなと。
幸村にしても一番信頼する佐助だからこそ大切な姫と妹を託すのではないかと思うのです。
筆頭、夢主に関しては思う存分書くことが出来ましたので補足はありません。二人はこの後もずっと幸せになるといいと思います。
約八ヶ月に渡り【雁の聲】にお付き合い頂きありがとうございました。
滅亡の悲哀とか、その後どうやって生きるかとか読み手の方にちゃんと伝わるように書けていたでしょうか。
初めて書いた小説でありましたので、拙いところが多々あったと思いますし、武田方滅亡という設定はご不快な方も多かったと思います。この場を借りてお詫び申し上げます。
本編は、これにて一旦終了でございますが、お受けしたリクエストにある武田時代の夢主、幸村、佐助などのお話もありますので、もう少しお付き合い頂ければ幸いです。
皆様の温かい拍手、メッセージに支えられ完結させることが出来ました。重ね重ね御礼申し上げます。
2012-02-18
十七夜 拝